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ピンクゴールドの在来種28cm。魚肉もサーモン色でした
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目指す峠は標高1000m。山道を上がっていくと、車の温度計が10℃から9℃になり8℃になる。登るにつれて下がっていき、頂上あたりでとうとう0℃になった。
陽が落ちる前に宿に着いてポイントを下見した。昨年の台風で景色がすっかり変わっている。砂が堆積してフチは浅くなり、水量も例年に比べるとかなり少ない。いつものポイントに魚影は見えなかった。
翌日の早朝、ポイントに入ったのは5時40分くらいだ。月齢19だから月は明るいはずだけど、両側から山が迫っているために峪底は暗く、目印はおろか竿先すら見えない。
勘をたよりに仕掛けを流し始めたものの、たった数投で根掛かりした。竿を縮めて水に立ち込み、ラインをつかんで真っ直ぐに引っ張り切る。0.4号の完全通しだから結構つよい。切れたのはナマリの直下だ。鈎は6号と小さく、ハリスも直径わずか0.1mmだから暗い現場で結び替えるのは結構難しい。
鈎に手間取っているうちにだんだんと岩が見えるくらい明るくなったが、昨年の経験から、もう少し明るくならないと喰わないことは判っている。
水は猛烈に冷たい。岩の上に立ったら、おや?脚が持ち上がらない。なんとフェルトソールが凍り付いたのである。
だいたい水深が浅すぎるし、この寒さではエサを追わないだろう。渓相が一変するほどの大水が出たのだ。ヤマメが残っているかどうかも判らない。
寒さで喰い渋ることを予想して、ミミズではなく一口サイズのエサを用意してきたけど、陽が昇るまでは釣りにならないから、それまでにポイントを荒らさないよう、ちょっと外した場所に、めちゃくちゃ気を抜いてエサを放り込む。
エサが水中に入ったと同時に水面を割って大物が跳ねた。ヒットだ!
バッタンバッタンと跳ねまわるのを強引に寄せる。ズシリと重い魚体を岸にズリ上げたら、糸をヤブにとられないよう慎重に操作して竿を置く。野太い魚体を掴みあげたところで鈎がバレてしまった。チモトが歯ズレで切れたのだろう。
鈎を結ぶだけでいいのだけど、念のために仕掛けを全部取り替える。0.4号にとっては過酷なテンションが2回もかかったし、なにより暗い中での細かい作業がつらい。ところが、外した仕掛けを巻きとってみたら、ないはずの鈎がついている!?糸が切れたのではなく、皮一枚で唇に刺さっていた鈎が地上で外れたのだった。
新しい仕掛けに、本日のお薦めエサ、沖アミの「生イキくん」を付けて同じ場所で2匹目を狙う。
心眼モードで目印の動きを追っていると、岩陰でフッと止まった。エサをくわえたのだ。慎重に、3秒ほど待ってアワセを入れたが、水面まで上がって魚体を見せたところでバレてしまった。(スッポ抜けである。ぼくは小鈎が好きなので、たまに大物がヒットするとこんなヒドイ目にあうのだ)
天井糸なしの直結勝負だから反動でラインが穂先に穂先に絡みつく。竿をクルクル回してみるがほどけない。。右・左、どちらに回してもほどけない。糸を引っ張ると、ピッという感じで竿から剥がれた。竿と糸が凍りついていたのだ。
気を取り直してまたも同じ位置に流す。今度はしっかりフッキング!さっきバラしたやつである。グイっと寄せて2匹目無事にランディング。ノドの奥まで呑み込んでいるのでハリスを切って鈎を結び換えた。ペンチで外すときにチモトを傷めそうだったからだ。面倒だけど大物を釣るためにはこれが正解だと思う。
デカイのと30cmくらいのが足元でバタバタしている。クリルに入る大きさではないし、岩の角に頭を打ちあてて締めたのだけど不十分で、ゾンビー化しつつも逃げようとするので気が散っていけない。
あせって鈎結びがゾンザイになったのか、次のヒットでまたもバラしてしまった。糸の先が縮れている。巻き数が少なかったので鈎がとれたのだ。時合いを逃してはいけないのでアセリながら鈎を結び替えた。
数秒すら惜しいので、まあいいかってところでエサを付けて放り込む。水面上20cmのところを目印が水平移動していく。いいぞ。目印の動きがフト止まる。こんどは早アワセだっ。さっきの場所でさっきと同じ引きだからさっきのやつだ。3匹目にはピンクゴールドのヒレピンが釣れた。これも尺近い大きさだ。
4匹目も大物のつもりで竿をあおったら勢いあまって手元に飛び込んできた。
5匹目はもっと小さかった。20cmを少し超えるくらい。
去年はだんだん大きくなったけど、今年はどんどん小さくなるな。
いつのまにか明るくなって、上手に白ヒゲの仙人みたいな釣人が立っている。この仙人が、あろうことか川に向かってお経を唱えだした。これが聞こえたのか、うちのゾンビーどもが興奮しだしたのでポイントを離れた。
つぎは数年前に26cm級のバカ喰いを堪能したポイントだ。ここでイトコと二人で大型ばかり20匹ほど上げたのだ。ところが、まだ人が入っていないはずなのにアタリがない。大水で渓相がすっかり変わってしまっているので、20cmを一匹だけ追加したところで竿をたたんだ。正味わずか1時間の釣りだった。
ヤマメ界は「金の脳・銀の脳」システムを採用しているから、20cmを5匹釣らないと23cmの良型は釣れない。23cmを5匹釣れば26cmを一匹貰うことができる。これが5匹貯まってやっと尺クラスへの挑戦権が得られるのだ。30cm級(公称値可)を5匹集めれば、尺を立派に超える大物は自動的に手に入る。
クーラーに入れるときに測ってみたら今年最初の獲物はなんと35cmだった。前回の同クラスゲットから4年も経っている。35cmは、数字上では30cmと大差ないが、実物は二周りほど大きさが違う。重さも迫力も倍くらいある。人相もかなりわるい。(ぼくに絞められそうになって怒っているからね)
シーズン最初の一匹がこれだもの。ジワジワと嬉しくなってきたので、生まれて初めて魚拓を取った。抱卵したメスの腹からは10cmもあるヤマメの子が出てきた。
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