2006年の解禁日に川辺川でスカを食らってしまい、すっかり意気消沈したワシラだったが、07年の解禁日までには完全に復活していた。3月1日は木曜日なのでパスして、翌日の金曜日に日之影まで遠征することになったのである。同行は弟子のバツイチ独身Tくんと、そのまた弟子の、まだ鈎が結べない初心者シゲルくん。秘湯「白滝温泉」に3人分の予約を入れてお昼前に出発した。
解禁日には雪が降っても不思議ではないのだが、その日は汗ばむほどの陽気だった。
上流のCR区間を避けて中流域の巨岩地帯に入渓すると、水量が少なくて釣れるヤマメも小型ながら、退屈しない程度の釣果があった。 18センチくらいの小型を数匹キープしたところで23cmの良型が釣れた。なかなかの大場所である。見るとあちこちでヤマメがバシャバシャと跳ねているではないか。いつのまにか夕暮れが近い時間帯になっている。
ぼくが釣ったヤマメは、独身Tくんが自分のビクに入れろ入れろと勧めてくれる。いつもより親切なので訊いてみると釣れたヤマメはすべて彼女に貢ぐというのだ。それでぼくの分まで持ってくれるワケだ。でもまあそういう事情ならば本腰を入れて釣らねばならない。
用意したエサはミミズと長良川の川虫、さらに爆釣秘密エサの「くわせオキアミS」である。生きた川虫が効いて連続でバタバタと釣れたけど、10匹ほどキープしたところでさすがに喰いが止まった。ミミズでは一匹も喰わなかった。水面で、夕暮れの羽虫を喰っているようなので、タナを変えて水面下10センチを流すとまたポツポツと釣れだして、いくつ釣れたか判らなくなったころには川虫も切れたので納竿。今晩のお宿「白滝温泉」へと向かった。
白滝温泉は上品な老夫婦がやっている。温泉はph8.7の立派なアルカリ性美人湯だ。加熱してあるのでヌルヌル感がいっそうつよく感じられる。
シラタキだけにコンニャクが三品もでたが、シシ鍋をつつきながら秘境の生活についてあれこれタメになるお話を聞くことができた。これからの人生に役立ちそうな素晴らしいお話だったが翌朝にはすっかり忘れてしまっていた。
ひとつだけ覚えているのが、温泉ではお客さん用にヤマメを飼っていて、それをカラスが襲うのに、なにか小さなものを水面に落として、寄ってきたところを捕まえるというのだ。熊本の水前寺公園ではササゴイの「ルアーフィッシイング」が有名だけど、そのくらいカラスだって出来るのだ。何を投げ入れたかは見えないけれどたぶん木切れだろうとのことだった。
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さて翌朝は土曜日である。早めに出かけないとほかの釣師たちに先を越されてしまうぞ。
そこでまだ暗いうちに昨日のポイントに到着。ウェーダーを履いていると、もう道路向こうに釣師が来ているではないか。爆釣ポイントを取られてはならない。急いで川原に降りて仕掛けを用意するのだが、あわてたあまりにライトを置いてきてしまって何も見えない。
大変な苦労の末に仕掛けを取り付け、第一投を入れたところでいきなりヒット。取り込んではみたものの鈎を呑み込まれてまたも一苦労である。しばらくして降りてきた釣友のライトを借りて鈎を結び替え第二投。またもいきなりヒット。これも呑み込まれてしまったので糸を切り、ライトを口にわえて鈎を結びかえる。
どうも秘密エサのオキアミが効きすぎて鈎を呑まれるようだが入れ喰いである以上はとにかく頑張るしかない。暗くて仕掛けが見えないうえにウェーダーがズリ落ちてくるので困った。あわてていたのでサスペンダーをかけないまま釣っているのだ。ヤマメのヌルで手が汚れており、そうそうズボンを引き上げることもできない。じつはワシは暗いのをいいことに半ケツ状態のまま釣りをしていたのだ。
←白滝温泉の駐車場
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そのうちにスペアの鈎がなくなってしまった。少なくとも10本以上はあったはずなのに、こんなことは初めてだ。
だいたい、鈎外しなんてのは鈎のタタキが見える喉もとまでが限界で、腹の中まで呑み込まれたときには役にたたない。いや立つのかも知れないけど使い方が難しいのだ。ペンチを使っても糸が傷むしね。天井が開けていて木に仕掛けを取られることがないため、釣れるほどに消耗してしまったのである。
ケツを半分出してガニマタで釣っているうちに、空に透かせば糸が見えるくらい明るくなってきた。そこでいったん手を休めてベストを脱ぎ身なりをしっかりと整える。
しかし ここで判った驚愕の事実!
なんと孫弟子のシゲルくんがまだ釣ってないというのだ。彼には敵の侵入に備えて下流の番を命じたままであった。なにも教えずに放りっぱなしだと一匹も釣れないのか!?
見ると使っている市販の仕掛けが大きすぎる。いくら解禁日でも本流用の青バリではダメだ。それでもオキアミを伸ばして付けるようにしたらすぐに一匹釣れたので一安心。当方も、相次ぐ鈎の結び替えでチョーチン釣りのように短くなった仕掛けを新品に取り替えてさらに釣りを続ける。
ところがふと気がつくと二人組の釣師が下流からこちらを眺めて「いいないいな光線」を送ってくるではないか。竿がどんどん曲がってうらやましいだろうなぁ。来たぞ!おりゃー。ゼロ釣法の竿だから20センチもあれば思いっきり満月に曲がるものなぁ。もう一匹だ。とりゃーっ!。
面倒なので数えてないけどぼく一人で2kg以上は釣ったと思う。秘密エサのオキアミくん大活躍だ。でももう完全に釣れ止まってしまった。久しぶりの大爆釣を堪能したので場所を譲って移動する。(もう釣れないもんねー)
次は少し下流の、水流の激しい落ち込みで竿をだした。大岩の上から下流の壺に流し込むと根掛かりかと思うような大物がヒットした。でもこれは取り込めなかった。だってもう釣り疲れしちゃって、取り込むつもりで竿を出すような気配りなんてできないもの。
昨夜分のヤマメは冒頭のとおり独身Tくんが彼女に持って行った。しかし弟子とその弟子の間にどんな密約があったのか。本日釣れた分は孫弟子シゲルが全て持って帰ったのである。ぼくの分は一匹もない。一番デカイのは24cmもあったのに・・。
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