ユダヤ教で発生したある概念が、いったんキリスト教へ伝わったのち、中央アジアを経由して仏教圏へと広がった。用途はもっぱら日々の吉凶を知ることで、日本に持ち込んだのは空海である。
宿曜教として伝えられたその概念とは、「日ごとの運勢は順番に巡ってくる七つの特別な星に支配されている」というものだ。特別な七星とは、ほかの星たちとは違うルールで動く「惑う星」のこと。
地上からみた空の星はその位置関係を変えることなく一年をかけて大きく回転する。冬の星座は次ぎの冬にも、夏の星座もまた規則正しくまた次の夏にあらわれる。ところが太陽系の、火星・水星・木星・金星・土星の五惑星だけはほかの星たちとは違う自分勝手なペースで動くことから、不思議な力が備わっていると考えられた。天王星や海王星はそのころはまだ発見されていなかったので曜日には参加できなかった。
七星のうち五星は判った。残りの二星は、これもまた他とは、まったく違ったルールで動く月と太陽である。火水木金土+日月。現在なにげなく使われている七曜はじつは占いから発生したものだ。
七という数字はこれら特別な7つの星からも、月の満ち欠けの周期29.5日を朔・上弦・望・下弦で4分割した7.375からも得られる。七曜が伝わる前、日本には六曜制があった。なじみ深い、先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤日のことだ。もとは中国で漢の時代に、五行説の前身として発生した六行説である。日にちに割り当てるルールが一見したところ複雑なために神秘性がつよく、占いとして親しまれることになった。
ゲームのトランプは、日々を占うカレンダーから発生した
トランプのカードは全部で52枚あるが、これは一年が52週間であることを表している。
1から13までの数字を足すと91になる。ひとつのシーズンの日数からきたものだ。
4種のカードは四季をあらわし、全部を合計すれば364になる。一年には一日だけ不足しているが、これを補うために生まれたのがジョーカーである。
分度器はカレンダーである
算数でお馴染みの分度器も、もとはカレンダーだった。カレンダーの語源としては、カレドニア人が発明したからだとする説があるが、calendaeというラテン語は朔日(1日)という意味である。カレドニア人説は音が似ているというだけで根拠は乏しい。
分度器のオリジナルは360度の円形で、中心が太陽の位置である。地球は一日に一度づつ動いていき、30度が一ヶ月に、90度がひとつのシーズンにあたる。一周すれば、ちょっと誤差はあるものの1年に相当する。これが、直角が、キリのわるい90度になった理由であり、度の下の単位が何分何秒になった理由である。
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