鋤鼻器官ってご存じ?


耳垢のことを英語でEAR-WAXという。イアーダストとは言わないように、白人も黒人も、耳垢はワックス状にネットリしているのが普通である。日本人にもこの飴耳系がごく少数いるが、大多数は乾燥した粉耳系に属している。耳垢の違いは人類学的な系統の違いである。これは遺伝物質のスイッチ作用からくるもので、おなじ遺伝物質が腋臭の強弱もコントロールしているから、飴耳系の人は一般に体臭がつよいはずだ。

人類はいくつかの場所で発生していて、その系統による違いは、アルコールや疾病への耐性、歯の裏の筋の数、全身の骨の本数、頭蓋骨にあいた神経穴の位置、襟足の毛髪の向き、足指の長さのバランス、指紋などさまざまな処にみられる。耳垢もそのひとつで、哺乳類のオスの耳垢はウェットなのが基本である。発情期に耳からフェロモンを発してメスを誘因するためだ。メスはオスの匂いで交尾の相手を選び出す。匂いに敏感なメスだけが有利に繁殖するチャンスを得るので、一般に女性の嗅覚は男性よりも鋭敏である。
フェロモン専用の感覚器官はヤコブソン器官または鋤鼻器官と呼ばれる。その神経組織が鋤のように枝分かれした形をしているところからの命名らしい。馬などでは、普通の匂いを感じる鼻の神経とは別系統の神経が、直接脳幹にまで繋がっているという。

鏡で自分の鼻腔を覗いてみると、直径3ミリくらいのクレーターが正面を向いているのが、いとも簡単に観察できる。ところが、人間には鋤鼻器官は存在しないことになっている。
末端の感覚器官は目の前にあっても、解剖学的にその神経がどこにどう繋がっているかが解明されていないからだ。事実はどうであれ、「人間にはフェロモンを感じる器官がない」
解剖で証明されなければ、存在しないのと同じ??解剖学者の皆さんは、ちゃんと自分の鼻にセンサーがあることを確認しなさいね。

だれも知らない耳のハナシ


兎や犬が耳を動かすのは、反射板の向きを調節して音源を探っているだけではない。耳からアクティブに音波を出すことで反射音を情報として利用しているのである。
人間も両耳から音波を出している。どの動物も耳は一対で、左右で感じる音の強弱と位相の違いから、音の来た方向を知ることができる。しかしこのような2点測距方式では、水平面上の方向を知ることはできても、3次元的に、たとえば上方向から来た音源の位置を知ることはできないはずだ。

2点測距の限界を肉眼で確認するには、水平に張られた電線を眺めてみるといい。空を背景に10mくらいの距離に一本の電線が真横に張られているとする。両眼が水平にある状態で、電線までの距離をつかむことはできない。頭を横にして、眼を上下にすることではじめてその距離が把握できる。

現実に人が音源を3次元的に知ることができるのは、耳が外部から来る音を精密解析しているからである。地面からの反射音のごく微妙な時間差、骨伝導との比較がリアルタイムで処理される。
人の内耳には、振動を電気信号に変換する特殊な有毛細胞があって、自ら音を出すことで、外部からの音を増幅して伝える。この細胞には2種類あって、約4000個の内有毛細胞は振動を電気信号に変えて脳に送るだけだ。約12000個の外有毛細胞は、外部からの音の周波数に合わせて、能動的に振動を発生させる役割を持っている。この外有毛細胞の起こす音は、約40%の人で耳の外までかすかに聞こえるという。

深夜、あたりの騒音が静まったころ「シーン」という耳鳴りのような音を聞くことがある。
近年までこの音は、まさか現実の音ではなくて、気のせいだろうと思われていた。これが本当に空気の振動であることを確認するためには、なにか音を反射しやすいものを両耳のそばに置いてみるといい。お茶碗を2個用意して、耳にほとんどくっつくまで近づけると、自分の耳からでている音の反射音が聞こえてくる。近づけたり離したりすると音が変化するのがわかる。人もまた音波発信器を備え、音響定位をしているのだ。

音量は小さいが、相手が人ならたぶん同じくらいの周波数の音波を出しているだろうから、干渉や共振で不規則な音波が発生するはずだ。自分が出している音には無感覚になったとしても、このような変化音には敏感だと思われる。なにか人の気配を感じるなどという現象はこの音波発信器の仕業かもしれない。

 

血液型と性格とビョーキの関係


一般的にいわれる血液型はA・B・O・AB型に分類されていて、血液の遺伝的な特徴をあらわしている。これらは赤血球表面の糖鎖の構造の違いからくるもので、O型が持つH遺伝子を基本として、糖がひとつ余計にくっついてA遺伝子の構造になった場合にA型となる。別の構造の糖がつながってB遺伝子になればB型に、両方の遺伝子を持った場合にはAB型になる。これらの遺伝子による血液型の組み合わせにはAA・BB・OO・AB・AO・BOの6通りがあるが、輸血に問題がないので通常はAOはA型として分類され、BOはB型として分類される。表面に現れる血液型としては4種類だけになってしまう。

この生物的な抗原抗体の一致が輸血適性を左右するが、もうひとつRh式血液型も輸血に関係している。人間と赤毛ザル(Macacus Rhesus)だけに共通の抗原で、1940年になって発見された。
Rh式の主要抗原はC・c・D・E・e の5種類があって、とくにD抗原が重要なのだが、このような抗原の種類は主なものだけでも60種以上が確認されている。実際にはマイナーなものを含めて400種類以上もの赤血球膜抗原が存在するらしい。
これらを系統別に分類するとABO MNSs P・Q Rh ルウィス ケル ルセラン ダフィ キッド ディエゴ コルトン Xg など主要な12種類の血液型に整理される。ちなみに人名のように見えるのは、その血液型を発見した研究者の名前ではなく、抗体が最初に発見された人の名前、つまり輸血によって副作用を起こした犠牲者の名前である。血液型によってそれが最初に出現した地域が異なっていて、たとえばルウィスが+の人は中央アフリカが原産地である。

1945年あたりから研究が始まるようになって、1987年にその結晶構造が決定されたHLA(HUMAN-EUKOCYTE ANTIGEN /動物の場合はMHC)とは、白血球の主要組織適合抗原のことで、クラスTのA・B・C3種類の遺伝子と、クラスUのDR・DQ・DP合計6種類からなる遺伝子コードである。この遺伝情報は、両方の親から6種類ずつデジタルに受け継がれるので、膨大な種類の組み合わせが存在する。すべての血液型の、計算上での組み合わせは 1,147,912,560通りの可能性がある。

血液型による性格判断の第二次ブームは、日本から発生して世界に広まったもので、いまでは多くの国々の書店に本が並ぶようになった。国内では通算で約350冊が出版されているが、性格との関連については否定的な心理学者のほうが優勢である。血液型性格判断には信頼できる統計的な手法が用いられてないうえ、そもそも性格の分類方法が異なっているのだから無理もない。
 
オッテンバーグによるABO式では6種類に分類される血液型だが、もともと血液型は発生した地域の環境に応じた性格になっている。みながみな同じ性格で、ことに対して同じ行動をとっていたのでは進化の道は閉ざされてしまうからだ。

好奇心や研究心の旺盛な連中、なにも気にせずにひたすら働きつづける連中、彼らを搾取する人種がいないと、科学や文明の発展はなかったかもしれない。探検家ばかりの遊牧B型集団や、好戦家ばかりの狩猟O型集団はすぐに絶滅の危機に晒される。消極的な定住策をとる農耕A型人間だけの場合もまた、変化に対応できないという弱点がある。
然災害や疫病、気候の変化などによって、別の環境に移住する必要がおきた場合には、物事を苦にせず、へこたれない性格を持った人間の出番となる。
特定の条件に適応するということは、それまでの環境への依存を捨てる危険につながる。これが進化ということである。個人個人はスペシャリストでないと困るが、あまりに専門性が高くなると、適応力と生存の可能性が狭められてしまうから、集団としてはジェネラリストでないと生きていけない。
性格の多様性はそのまま変化への対応力である。多様な性格の人間を適量供給でき、それを容認する母胎が存在しないことには人類は滅びてしまう。DNAのリザーブの多さが、その種の存続の安全弁となる。

血液型と体質は遺伝子レベルで結びついている。血液型によって病気への抵抗力が違う傾向があるのも、種として生き残るための戦略である。

統計上の数字はO型が十二指腸潰瘍に弱いことを示している。A型を100とすると136もの危険率だ。胃潰瘍にも116と、高い罹患率である。蚊を媒体とした感染症にもかかりやすいが、梅毒と呼吸器疾患にはきわめて高い抵抗力を持つらしい。

A型はO型に比べて癌系統に弱く、とくに胃ガン(120)や子宮ガン(114)にかかりやすい。神経性の消化器障害と呼吸器の病気も目立つ。糖尿病も弱点になる。

B型は結核にやや弱く、A型に比べて105の危険率がある。血圧にやや異常がでやすいが、糖尿病には圧倒的につよく、平均寿命も突出して長い。

AB型は喘息に弱いと言われている。梅毒にも感染しやすくてO型の180もの特異性がある。実際に梅毒スピロヘータに弱いのか、梅毒の危険をものともしないのかは不明。

性格(気質)とは個人における情動認知のスタイルである。外界がどのような状況にあるかは、この認知スタイルによって解釈され、生体内部での生理学的反応が決定される。この情動認知スタイルが、特定のストレスに対する行動、つまりライフスタイルを決定する。こうして、性格は生体内部の恒常性を揺るがす病気への耐性(または脆弱性)に関与する。

ひとりの家具修理職人が心臓病の専門クリニックを訪れた。1950年代、サンフランシスコでのことである。
ここで彼は、診察室のイスの座面が特徴的なすり減りかたをしていることに気がついた。このイスには、多くの人が浅く腰掛けたような痕跡があったのだ。
「イスの前のほうに座るような性格の人は心臓病になりやすいのではないか」 この発見が、近年における気質と病気の関連をさぐる糸口となった。(病気と性格の関連についてはヒポクラテスの時代から関心が持たれていた)
このことから、攻撃的でせっかち、競争的で怒りっぽい人は虚血性心疾患を起こしやすいことが発見された。怒って興奮すると、身体はその反動として、心臓病・脳溢血・肝炎・肝臓ガン・前立腺肥大・生理異常などの症状をあらわす。
このように、狭心症や心筋梗塞など虚血性の心臓疾患を起こしやすい行動様式をタイプA性格と呼ぶ。生活の中心に仕事があり、支配や成功への欲求が強く、競争的で攻撃的で負けず嫌い。せっかちで早口だが基本的にはまじめで、体質的に交感神経が過剰反応しやすい。飲酒と喫煙量が多く、肉を好むのですぐに見分けがつく。
タイプB性格はこの反対で、よく言えばおおらか。わるく言えばルーズ

1978年の研究で、米国の医学生の性格と病気の関連を調査したデータがある。
「気分屋で不安定」「ゆったりして堅実」「せっかちで行動的」の3群に分けて精神異常や癌、高血圧、心筋梗塞などとの関連を調べたもので、これによると「気分屋で不安定」な群は癌と腫瘍にやたらと弱く、ほかの2群に比べて3倍近い77%もの罹患率を示している。
クヨクヨする人は胃潰瘍になりやすい。ストレスがあると交感神経が緊張して、末端の血管が収縮する。血液の流れが悪くなると、胃を自己消化から保護する粘膜への栄養障害を起こして潰瘍を発生させる。血流不足は、肩こりや心筋梗塞もまねく。胃潰瘍の患者の多くは一見明るくて真面目なタイプである。おそらく、周囲に協調しようと、無理に明るく振るまうことが負担になるのだろう。季節的には、肉体にも負担のかかる真冬と真夏に発症例が多いという。 

心理学者のリディア・テモショックはタイプCと呼ばれる性格を提唱した。
生活に対する満足感と幸福感は低いのに、不平不満を口にしない。対人関係で傷つきやすく、孤立感がある。怒りなどの不快感情を押さえ込み、周囲に合わせようとする。これは、じつはガンになった人たちから抽出した性格傾向なのである。

1901年にウィーンのランドシュタイナー博士によって、ABO式分類法が発見されるまで、ヒトの血液はどれも同じだと思われていたらしい。血液が失われたのなら外部から補ってしまえばどうだ、とする発想は古くからあったようで、記録では1654年に最初の輸血が行われたとある。
それぞれの血液型によって、抗原に対する抗体の種類が違うので、輸血の場合に適合性が問題となる。しかし、当時の輸血実験では、とりあえずブタの血を輸血してみよう、なんてこともあったのではないか?ちなみにブタにも血液型はあるが、赤血球の大きさがヒトとは万十とアンパンほどに違うので、血管のどこかで詰まってしまうかも知れない。

血液を採取するのは注射器一本あれば可能である。研究の進歩の陰には、人体のほかの組織をもらったりするのに比べたら、材料の入手がはるかに簡単という事情があったようだ。


いやあ!さすが「トリップ」ですね。TOPに戻る