ハンドルを自分で自由に替えられるようにデザインしたナイフです。渓流用には6cmくらいが使いやすいのですが、研減りを考えて刃長8cmにしました。ハンドルが本体よりも飛び出しているのが特徴で、この部分を薬指と小指で挟むように握ると滑りません。
インテグラルなので、軽量にして全体のバランスをとるため、ハンドルに隠れた部分の鋼材はくり抜いてあります。だからスケルトンにすることも、ヤーンを巻いて仕上げることも可能。オシリはサカナの処理をするときに、内蔵を掻き出すスクレーパーにしました。
青紙割り込み黒皮仕上げの、このオリジナル鍛造ナイフ。送ったFAXから型取りして、焼きを入れる前に実物でサイズの確認をしてくれて5,000円でした。(ケース別) キンキンに鋭い刃をお願いしたところ、ホントにメスのような切れ味に仕上がって52g。

フォールディングナイフは安全だけど、緊急のときに両手が必要で時間がかかるのが弱点。シースナイフは丈夫な反面、嵩張って邪魔になります。持っていることを忘れるくらい身軽に持ち運べるナイフは、刃渡り8センチが限度でしょう。ハンドルはすべりにくくて軽く、汗を吸ってくれる木材が一番。
身はやっぱし鍛造が、形と硬度を自在にオーダーできて使いやすいと思います。ステンは使えば使うだけボロになりますけど、鋼は風格が増します。軽くて薄く、よく切れて研ぎやすいという面で、群馬の某刃物工房の新勝流重ね鍛えがベストではないかと思って電話してみました。
ご主人がでてきて、美術品の鹿の角のハンドル材(10万円)を勧められたので、木製をお願いしたら

「名折れになるから他をあたってくれ」 との返事!!

大きいのも小さいのも値段は変わらないから大きく作れとまで言われる始末。このサイズが欲しいのだからこのサイズで、と主張するもムナシ。
客の欲しいものではなくて、自分の作りたいもの勧める。この勝負「門前払い」で天○刃物工房の勝ち!


藪払い尺一寸

一番上のオリジナルナイフと同じ熊本県の野鍛冶さんに作ってもらいました。注文は「親指くらいの枝が飛ばせる藪払い」です。安来鋼青紙を使っているので粘りがあり、安心して使えます。アブないので先は尖らしていません。
用途はマチェットですけど、洋式では形が美しくないので、竹割り形でオーダーしました。白樫の柄を焼いて黒くしています。昔の表札は炭で書いた文字だけが浮き上がっているでしょ。炭化した木は風雪に強いんだと思います。しかも滑りにくいというオマケがつきます。堅木に全力で打ち付けても大丈夫。ハマグリ刃のくせに丸めた新聞紙をスッパリと断ち切る鋭さがあります。


釣りやキャンプで使うナイフがいつの間にか、たまってしまいました。マニアというほどではありませんが、元は鉄工所経営者なので、火造りや焼き入れくらいは自分でできます。自作の刃物に焼き入れするときは、身近にあるSS41鉄板のカドに打ち付けて出来具合をみていました。鉄を切るタガネ並みの硬度が目標です。いくら刃先の角度が鋭いとはいえ、クギが連続して10本くらい切れなければ、それは市販のタガネ以下です。

どんな刃物でも最初の数回は、ヘルメットくらいスカっと軽く貫通できますが、問題は回数です。硬いだけの材料ならたくさんありますけど、刃物にはいろんな要素があるので、なかなか思い通りにいきません。
ここでは刃物を実際に使った印象を書いてみます。


パウダーハイス鋼

カスタム工房の作品。新潟工業試験場でテスト生産された炭素含有量3%の粉末ハイスをステンのダマスカスで挟みこんでいます。炭素が0.5%もあれば刃物鋼ですから、その硬さは推して知るべし。触れる物すべてを抵抗なく切ってしまいます。RC硬度もたぶん60台後半で実用世界一でしょう。刃長6cmと使いよい長さですが、あまりに硬いので自分で研ぐのはツライです。キャンプでも食材以外は切らないようにしています。
同じ作家のATS34ダマスカスも使っていましたが、こちらは川で落としてしまいました。残念!

オピネル カミソリのように薄刃なので切れ味はそこそこですが、サビやすく、いくら鼻のアブラで磨いてもサビは永久にとれません。輸入経費や関税を考えれば、現地の問屋価格はたぶん400円くらいのオモチャナイフでしょう。この鋼の刃付け角は砥石面に対して15度が限度ですね。刃持ちは良くないです。雨に濡れると、木のハンドルが水を吸って刃が出なくなります。
バックのワンテン

世界的に評価の高いホールディングナイフ、BUCKの#110。力をいれやすく、さすがによく切れます。このナイフは刃長8.5cmしかないわりに、登山ナイフのように大柄なのであまり気に入っていません。木材ならノコギリか鉈で切るべきで、通常のキャンプでこのサイズのナイフは必要ありません。基本的にばかでかアメリカ人のナイフだと思います。

バック こちらもバック。ハンドルがプラスチックで軽いので、キーホルダーにしています。小さいくせに3500円もしました。刃は腰を盗んでいるので研ぎやすいですが、大きなサカナを絞めるほどのパワーはありません。開閉はすごくスムースで、お尻のロックを押さえながら振れば片手でオープンできます。真空パックを開けたり、ヒモを切ったりと日常使いに便利です。
ビクトリノックス 渓流釣りにぴったりの大きさ。赤いボディが目立ってなかなかヨイですね。刃は意外なほどの剛性があって、30cmクラスのヤマメまでラクに処理できます。小刃は閉じてしまったガン玉を開けるのにちょうどいいですよ。うしろの、マルチの方は重いので持って歩けません。どうせならオーダーでパーツを組み合わせてくれればいいのに。ヤスリみたいに、使えばヘタる消耗品なんか要りませんもの。
ちょっと大きめ刃長8cmのビクトリノックス。でかいワリに軽くて、グリップも持ちやすいですね。スライドロックが珍しいです。しかしまだまだまだ市場調査不足。絶対に誰も使わないリーマ(革ヒモ通しつき)や、行方不明必至の爪楊枝なんてパーツがついています。これをペンチにしてくれれば喜ぶ人が多いと思いますよ。
ドイツではプーマと呼んでいる ハンドメイドのピューマ。スーパーキーンカッティングスチールと書いてあります。もう30年ちかく使っていますが、とにかく硬い刃でオイルストーンで研ぐのにも一苦労します。買ったときに聞いた話では、ヘンケルの4ツ子マークに相当する品質とのことでした。

ヘンケルの人形1個はオコサマ向けの入門品。双子マークは家庭用の普及品。三つ子は高級品。四つ子はめったに見れない超高級品。店頭に並ぶことはまれで、頼むと店の奥から大事そうに持ってきてくれます。そして五つ子はミュージアムグレードのコレクションアイテム。
フィンランド製 珍しいフィンランド製のフィッシュナイフです。いい鍛造ナイフを作れる国ですが、これはステンレス製。たぶんバイスに挟んで曲げればクニャリでしょう。木製のホルスターがついています。
 LEXON ハンドルはアルミ板をプレスで打ち抜いただけのチープな作り。バリが残っています。ブレードのロックもありません。なのにこの美しさはどうでしょう!デザインとはかくあるべしという見本です。
京都菊一文字の肥後守。”本刃付け”・”割り込み”と書いてありますが、ブレードの背には、はっきりとプレスの打ち抜き痕が!できあいの利器材を使っている疑い濃厚ですが、銀紙使用で切れ味は驚くほど鋭く、使い込んでヘタっても自分で元の鋭さに戻す自信はありません。高い肥後守は青紙を使っていますが、焼き入れの温度さえ合っていれば、銀紙の方が硬く上がるはずです。
これでもガーバー あのガーバーが、ワンハンドでシースから抜けるギミックナイフを作っていました。たぶんダイバー用だと思いますが、フローティングにはなっていません。目立つカラーリングなのでアウトドアで失くしにくいと思って購入しました。ハンドルが薄く短くて持ちにくいです。切れ味はとてもガーバーは思えないほどダメです。定価6,000円の価値はありません。
ダイビング サザエを捕りにコンブの林に潜るときに持って行ってました。これさえあれば巻き付かれても大丈夫。刃は異常なまでにシャープで、鉛筆を削ろうとしたらスパンと飛んでしまいました。何本切れるかと試してみたら、握った鉛筆5本が一瞬で10本になりました。この切れ味でメリケンつき。でも無敵の気分にはなれません。身が薄すぎるのです。


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