雨雲が日本列島を覆う。すべての山の上に雨は降り注ぎ、木々についた虫たちは葉の裏に避難する。しかし雨足がつよければ流される虫がでてくる。壊れた土の中から出てきたミミズも腐葉土の上を奔る水に押されて細流におぼれる。その細流はいつか川に流れ込む。
雨が支配するすべての範囲で、山から流された虫たちは一本の川に集められて流下する。雨の川にはエサが満ちあふれている。だから渓流魚は雨の日に喰いがたつのだ。


ヤマメ・イワナ釣りの必釣エサ
蜘 蛛 

クモ・バッタ・トンボ。フットバシで水面を流すわけですから、つまりは生きたドライフライですね。バッタは脚を、トンボはハネをもいで使います。夜、自動販売機や街灯に集まったカゲロウを捕まえてカゴに入れて持って歩くといいですよ。羽根は根元からむしっておかないとピョンピョン跳ねて逃げてしまうので大変。
ヤマメを釣って採卵している方に聞いた話では、自然のヤマメは養殖用のエサは食べないのでミミズや虫エサを与えて餌づかせるしかなく、そのとき一番良く食べるのは蜘蛛とのことでした。ちょっと苦手かも。

ブドウ虫 

上からボサがかぶった川なら、ヤマメも喰い慣れているので効くと思います。1匹25〜30円と高価ですが、扱いやすい上に保存性がよく一ヶ月くらいは使えます。白いので朝・夕のマズメ用にいいと思います。
養殖ブドウ虫の元になったのは、蔓草の節の中にいるムシ(イタドリムシ?)です。あまり売ってなくて、しかも1本100円とやや高価です。イタドリ虫はブドウ虫の改良前のものですから、効果はブドウ虫よりも劣るとされます。どちらも鈎からズレ落ちやすいので、つけるのにちょっとしたコツがあります。専用のケン付き鈎もありますが、この鈎にミミズなんかを刺すと、引っ掛かって外すのに大変難儀します。
最近は緑や赤の色つきブドウ虫も出回っていますが、天然のハチノコには負けます。ハチの子は人間が食べてもかなりウマイものです。成虫に近づいて茶色になっても使えますよ。食味でいけばヤナギムシが一番ですが、自然のものはちょっと大きすぎます。

さあここでウンチク。エビヅル虫っていいますね。知らない?言うんです。エビ蔓虫ですよ。このエビっていうのが大和言葉の古語でブドウのことです。葡萄は中国語由来ですよ。発音はプータオ。ブドウって呼ぶ前はエビって呼んでいたんですと。(以上、ものの本による)

カワ虫 
カゲロウとかカワゲラの幼虫。ヤマメには最高のエサですが、いるところが少ないし、捕るのに手間がかかります。川虫がいる場所を知っていても、朝マズメ前の暗い中でちっちゃいのを捕るのは時間が気になっていけません。ヒラタも初期には小さいし、キンパクは耳川上流で見かけるくらいの貴重品です。ここぞというときに使って、アブラメが釣れると哀しくなります。
4月いっぱいなら市販の「長良川の川虫」が40匹くらいで800円かな?結構何日も持ちます。便利な真空パックやビン漬けもありますけど、もろくて壊れやすいのが難点。予備用ですね。

巨大オニチョロ
クロカワ虫 

中・本流向きの大物狙いのエサ。源流ではあまりいいエサではなくて、ほかにないときに仕方なく使うくらいです。中位の大きさの石の裏にイトを出してへばりついている、体長2〜3cmの黒いイモ虫状のやつで、巣虫とも瀬虫とも呼びます。こいつは鈎を刺すときに緑の毒霧を吐いて攻撃してきます。どっちが頭でどっちが尻なのか?これは指でつまむと噛みついてくるのですぐ分かります。

川ムカデ 

ヘビトンボの幼虫。孫太郎虫が一般的な呼び名です。成虫は蛾なのかアブなのか判らないビュッと飛ぶヘンなやつで、幼生は川の本流にいます。ムカデそっくりの形で6cmくらいあって、クワガタ級の頑丈なアゴで噛みついてきます。怖くて触るのがイヤですが、動きがバツグンなので初夏の大物用にはいいエサです。

ミミズ 

WORM.べつに英語で言う必要は全然ないんですけどね。ミミズはEARTH WORM アースワームってことになってますでしょ。でも北米では普通にCRAWLERって呼んでますよ。3インチを超える大きさだとクローラーっていうみたいです。日本語にすると「のたくり」が近いかな?
日本には50種類いますよ。例のあの万年筆みたいな巨大山ミミズの正式名は「シーボルトミミズ」らしいです。つまんない雑学でした。さて、、

養殖モノは柔らかいけど、あまりに細すぎていけません。薄緑の培養土もキモイですから、お茶ガラで一週間ほど飼うといい色になりますよ。テリを出すのにゴマ油をかけるのがコツです。ぼくは専用のドバミミズの場所に、あまったキジを放流していますが、ダメですね。育ちません。プランターでもやってみましたけど、やっぱしダメでした。

土場ミミズはニオイが強くてなかなかヨイものです。いそうな場所を見つけたら、なるべく重いとがった棒を探してきて、地面に突き刺し、ブルブルと激しく揺すってください。天敵のモグラが来たっ!と勘違いして飛び出してきます。この方法はミミズを切ってしまうオソレがない上に、ピカピカの超元気なやつがドロなしで捕れて最高です。ぼくはやりすぎて手の皮が剥けてしまいました。捕ったミミズは金属製以外の容器に入れます。深い方がいいと思います。浅いと逃げ出します。ぼくのクルマは、マットをはぐると日干しミミズが出てきますものね。

山の、落ち葉の斜面にいるやつはピンピンと動いて、しかもヤマメのナチュラルフードですから是非捕獲しましょう。ただしポキンと折れやすいので注意ですね。ミミズ通しはハチマキの手前の頭側から刺すのがコツですが、弱りやすいのが欠点です。食い気があるときは頭にチョン掛けするだけの方が、動きで誘ってくれるので効果があります。
ミミズは水の抵抗を受けて浮き上がりやすいので、速く沈めて長くポイントをキープするには大きめのオモリが必要になります。(流れが速くなければ軽いオモリでOK) ヒマがあったら養殖ヤマメにミミズをやって、どんなふうに飲み込むのか見ておくといいです。

○○の刺身
ヤマメ釣師の秘密エサです。ナイショで使っている人がいるので、ここでもとりあえず秘密にしておきます。赤身がいいのか、それともトロなのか。(答えバレバレ)醤油はつけていいのか、ワサビはどうするべきか。等々、まだまだ解明すべきことが残されています。
赤身の血のニオイがいいのでは、と思いますが、トロを使って爆釣したこともあります。トロはほろほろと身が剥がれるのでナイフなしで使えます。しかも白い筋(筋膜)があるので鈎から落ちにくくてヨイです。ケチな魚屋でやや薄目に切ったものを買うといいでしょう。ボックリ大きめに切ると口に入りきれず、鈎がかりしないことがあります。比重が軽いので沈みにくいのが大欠点。

さらなるパワーアップをもくろんでイクラをつぶした卵液に漬けてみました。結果:大失敗。エサ入れほか関連物すべてがネトネトになってしまいます。苦労のワリに釣果なく、コリましたです。
ダンゴ 

唯一の植物性、ウドン粉の練りエサ。ガーリックとか味の素を入れて調味します。味噌の発酵臭が効くんだという人もいれば、味の素はどんな集魚剤にも使われているんだから・・と諸説フンプン。全然いいエサではないですけど、乾燥ミミズを配合すると画期的に良くなります。あまったミミズを容器に入れて天日干しで一週間、細かく粉末にしておくと使いやすいです。しかし利点も難点もその過激なニオイ。サナギ粉を入れるといいかも知れません。
成魚放流のときには、養殖場でつかっていたネリエも試してみますが、流れやすくてあまり良くないです。成分はコイのエサと同じらしいです。

川 魚 
バックウォーターあたりで、大型のヤマメはアユの子やワカサギ、アブラハヤなんかを食べています。同じヤマメの稚魚を共喰いすることもあります。エサにするのはヨシノボリで、ぼくのイナカではこいつをセドンカチと呼びます。ドンコの仲間です。ドンコをドンカチとも呼びますので「瀬のドンカチ」が名前の由来かも知れません。
ところが、イションカチと呼ぶ地方もあります。ヨシノボリが吸盤で岩面をヨチヨチと登る習性から、カチは徒歩の「かち」から来ているような気もします。中津江村では乱暴にもムシと呼んでいます。ムーチングで大物を狙うには最高ですが、捕まえるのが面倒だし、あまりに可愛いので、ルアーの方が気が楽です。
オキアミ 

何回か使ってダメだったけど、ついに’05年の解禁日に大ヒットしました。ほかの釣師の竿は曲がってないのに、こちらは尺超え連発!形は川虫に似ているし、アミノ酸も豊富でいいと思います。ハリ持ちはよくないですけど、総合的には扱いやすいエサです。磯バカ釣師さんによると、同じように見える沖アミでも釣果にはウンデイの差があって、どこその店のアレしか使わないって決めているそうです。
これは、じつは○○をつぶした液に漬け込むとスゴイらしいです。すぐに流れてしまってダメかと思ったけど、そんなことなくて大丈夫だということです。
このほか、活きた田エビなんかはぜひ使ってみたいエサです。たぶん、ブクを用意するだけの価値はあると思います。

秘 密 

ぼくの必殺・爆釣の隠しエサです。その効果は爆発どころではなく、テポドン的とも原爆的とも云われています。
フィッシングショーのときに、渓流ライン某社のテスターをやっているベテラン渓流師からや〜っと聞き出しました。最後の最後に彼が惜しそうに教えてくれた**は結構スゴそうです。とくにトロ場に有効で、最初に**を撒き餌しておいて、その流れをトレースしながら、付け餌にした**を先行させながらイトを送るそうです。底で知らんカオしていた大物までが狂ったように浮いてきて、まるで池のコイ状態になるらしいです。こっそり教えていただいた秘密兵器なので、残念ながら公開できません。

イクラ 
シーズン初期に有効のエサです。サケには自分の産んだ卵を保護するために、イクラがコロコロと流されそうになると、口にくわえて元の場所に戻す習性があります。だから北海道ではコーンでサケを釣るでしょ。保存性がいいので一応持っていきますけど、源流で天然繁殖したヤマメやイワナにはあまり効きません。グチュグチュペッと撒き餌に使いましょう。
カステラ 
最近、なにかで読んだ話だが、カステラを卵黄で練って鈎につけるといいらしい。まだ試してないけど、ぼくならイクラで練ってみるな。
補 足 

アブの幼虫を使う人がいます。入手方法が分かりませんけど一度使ってみたいものです。生レバーも使えるらしいですが、まだ試したことはありません。釣り雑誌には、渓流に棲むヒルとか水ミミズがいいと書いてますけど、九州のぼくは見たことがないです。ヤマメの棲息域にそんなヤツいるかなー。とにかくその時期に、川に自然に流れてくる虫であれば何でもいいと思います。
海のサカナは生理的に塩分を体外に排出するのに懸命です。逆に川ザカナは塩分を取り込もうと必死らしいです。とすれば、ゴカイなんかが案外効くのかも知れません。レインボーはゴカイで釣れますものね。

 

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